普段使っているモニタを4k*4枚に変更したのですが、ふとゲームをしようと思ったら今まで使っていたGTX1080では処理能力が足りなくなったためグラボを変えようと思っていたところに、じゃんぱらでRadeon RX7900XTXがなぜか特価で出ていたため久々のRadeonにしました。その時に色々検証したのでその時のメモです。
ことの発端
仕事でモニタを使うときに、置く場所の関係であまり多くのモニタを置くことができなかったので、モニタの中に極限まで情報をぶち込みたいという欲求から27インチの4Kモニタをスケーリング無しで使っていました。目を潰しながら4kを使っているうちに慣れてきたので、家で使っているモニタも4kにしようとすべて置き換えました。
1枚だけ変えると色味が合わないとかベゼル位置が合わないというような微妙なストレスが嫌なので 4kを複数枚買いましたが、使ってて思うのは個人的には27インチWQHDくらいの解像度がベストだと思います。
27インチ4kモニタは11インチのFHDモバイルモニタを4枚並べたときとDPI的に同じになるのでスケーリングなしにするとまあまあ厳しいですが、現代のITエンジニアは眼球に可能な限り多くの情報を詰め込む必要があります。
モニタを変えてからしばらくは忙しくゲームをする暇と気力がなくてオフィス用途でしか使っていませんでしたが、ふとARK: Survival Evolvedを起動してみたところ、すべてEpicの状態で4kネイティブで起動すると20FPSくらいしか出ないという状態でした。
ゲームしたいときに出来ないというのは問題なのと、4k複数枚の環境だと普通に使っていてもDWMプロセスやFirefoxなどのブラウザがVRAMを消費していって8Gのうちの5GBを消費しているようなことがあったので、いい加減グラボを変えたいという思いが強かったので新しいものを買うことにしました。
グラボ選定
最初は4080を買おうと思っていたのですが、じゃんぱらで7900XTXが特売されていたのでVRAMが24GBと多いという利点からこれも候補に上がりました。色々比較すると、
・純粋な3D処理能力は4080よりも高い場面も結構ある
・すべてのタイトルでDLSSなどの機械学習が使える訳では無い
・7900XTXの特価は12万だったが4080はどうしても18万くらいになる
・RTX5000シリーズが先送りになったのでRTX4000シリーズの価格が下る要素がなくなってしまった
・VRAMが多いので雑に使っても心の余裕がある
となり、過去散々ATiのグラボで色々踏んだ事があってもまあいいかなと思えたのでポチりました。
VRAMがそんなに必要になるか、と思うかもしれないですが、3ヶ月位(下手すると1年)再起動せずにブラウザのタブやウィンドウを大量に開いたまま使っているとVRAMの使用量が肥大化していき、VRAMが足りなくなるとブラウザやOSの挙動がおかしくなり、すべてのブラウザを閉じるという必要が出てきます。
ブラウザをすべて閉じても今度はWindowsのDWMがVRAMを握ったままになり、その状態でゲームをするとスワップのような挙動になる事があり、解消には結局再起動が必要になってストレスだったりします。
使い方が悪いのでは??というのはそうなんですが、原状どうにもならないのでこの使い方だとスペックによるパワーで押し切るしかないです。また、4kという解像度が1枚でFHDディスプレイ4枚分の表示面積があるので、それを複数枚となると相応のスペックが必要になります。
27インチで4kの解像度でゲームをする必要があるのかと言われると、別に画質を求めているわけではないのですが、フルスクリーンの解像度変更によって開いているウィンドウがめちゃくちゃになるのが嫌なので、どうしてもネイティブの解像度で出したくなります。
ただ、こういった変な要求がなければ現在では性能や値段、発熱や消費電力の扱いやすさから4070あたりが妥当だと思います。また、自分は今のところ常用デスクトップ機で機械学習をさせるつもりはないのでRadeonも候補になりましたが、普段機ででお絵かきAIも動かしたいというような要望があると必然的にGeforceが候補になるかと思います。
わかっていたけど高い消費電力
グラボを換装した感想ですが、4kでもARKなど今までやってきたゲームがコマ落ちせずかなり快適に動くので1080との性能差を実感しました。ただ、それに比例して消費電力が増えたので、 AMD Software: Adrenalin EditionというAMD謹製のGPUのモニタリング、チューニングをするツールから消費電力を監視し、これを下げる方向にチューニングする方法を模索することにしました。
フレームレート制限で消費電力を下げる
ARKを遊んでいるとGPUだけで350Wくらい行ってしまうので、どうにかこれを下げられないかとアレコレしていると、当然ながら負荷が下がればそれに伴って消費電力も下がることがわかりました。60Hzのディスプレイなので、それ以上のフレームレートは無駄になってしまうため、まずはフレームレートの固定を行いました。
HL2やL4D2などでゲームからV-Syncを有効にすると明らかな入力ラグが出るので今まではティアリング上等で200FPSなどのフレームレートを出していましたが、FreeSync対応モニタなのが有効なのかドライバが賢くなったのかわかりませんが、Adrenalineからフレームレートの制限をかけると気になるラグは出ませんでした。
80-90FPS出ていて350W消費していたのが60固定にすることによって300Wくらいに落ちたので、もう少し下げられないか試してみました
RSRなどのアップスケーリングを試す
Adrenalineの設定にRadeon Super Resolution(RSR)という項目があったのでこれについて調べてみると、ゲームの解像度をネイティブ以下に設定したフルスクリーンゲームを起動した際にドライバ側でネイティブまでアップスケーリングして出力する、という機能だとわかり、試しにゲームから解像度をWQHDにしてRSRを有効にしてみるとかなり効くことがわかりました。
具体的にはRSRを使うことによりフレームレート制限と合わさりGPU負荷が80%まで下がり、消費電力が一気に180W程度にまで落ちました。ただ、ゲーム自体はネイティ解像度以下で出力されるため、開いているウィンドウがぶっ飛ぶ問題は起きてしまいました。
よく見てみるとAdrenalineの説明にFSRをドライバレベルで実行するのがRSRである、という文言があったのでこのFSRについても調べてみましたが、FSRとは FidelityFX Super Resolutionの略であり、こちらは出力するテクスチャの解像度を内部的に落としたあと、グラボでアンチエイリアシングなどの処理をしたあとにアップスケーリングをかけるという技術になるようです。
ただ、FSRについてはゲーム側の対応が必要になるようなので、そもそもARKなどは対応していないのでは?と思いましたが、ゲームのオプションにあるResolution scaleというのがアップスケーリング前に描写するテクスチャの画像になるようです。しらなかった…
FSRについては思いっきり解像度を下げると流石にテクスチャの不鮮明さが目についてしますが、27インチ4kであれば7-8割位のスケーリングならネイティブと遜色ないレベルになりました。
60FPSの制限の中では画質と消費電力のトレードオフになりますが、違和感のないところでWQHDのRSRと同じ180Wかそれよりも若干高い200W程度で落ち着きました。もとの350Wに比べたらだいぶマシになりました。
ついでにDLSSなどについても調べてみる
AMDのグラボなのでNVIDIAの技術であるDLSSは使えないのですが、こちらについても調べてみたところ、やっていることとしてはFSRと同じ低解像度テクスチャのアップスケーリングだとわかりました。
違いとしては、FSRはスケーリング処理をシェーダーとして扱うため特殊なコアが必要ないという特徴がありますが、DLSSはその処理をTensorコアなどの専用プロセッサで行うので対応したグラボが必要になる、ということみたいです。
事実、FSRは1080でも利用できたようなので、実はこれで誤魔化せばグラボを買わなくても耐えられたのでは…という思いはありますが、FSRを行うにもグラボ側の余裕がないと効果がないようなので多分意味はあったと信じます。まあ、VRAMが足りない問題は出ていたので…
DLSSの進化系であるDLSS-FG(Frame Generation)は、実際のレンダリングフレームの間にTensorで(描写済みのテクスチャからいわば画像として)作成したフレームを挟むことによりフレームレートを上げる処理になるようです。同じような技術がFSR3でも実装されるようです。
ただ、補完フレームを挟む必要があるので入力から出力までのバッファが必要になり、入力のレイテンシ低減にはならず、むしろ増える方向になるようです。FSR/DLSSは実際の描写が軽くなるためこれを有効にすることによって入力レイテンシが下がるらしいです。
フレームレートと入力遅延が一致しないというのはなかなか難しいですが、GPUの性能が足りずそもそもコマ落ちするレベルでレイテンシが上がっているようなときにはDLSS-FGのレイテンシのほうがマシになる可能性はあります。
まとめ
昔は「ドライバのフィルタ処理で正しくテクスチャを描写してない!手抜きだ!チートだ!」 みたいなことを言っていた時期がありましたが、今となっては「クソ真面目に描写するのは馬鹿らしいからAI使って補完しようぜ!」みたいなことを言い始めるあたり時代を感じます。まあ前者についてはただの言いがかりですが。
フレームレートを増やす技術というのは言い換えれば同じフレームレートなら負荷が下がる技術ということになるので、極端な高フレームレートディスプレイを使っていないのであれば消費電力を下げる恩恵があるというのを実感しました。
それなら下位のモデルでもいいのではないかと思うかもしれませんが、これらの技術が (RSRは原理的に使えそうではありますが) すべての場面で使えるわけではないというのと、ベーストルクがあるからこそできる余裕というのもあるので、グラボを買うなら個人的にはある程度の上位モデルをおすすめしたいです。
ただ、11月ごろに7900XTXを買ったのですが、2月に4080Superが15万くらいで出るらしいというのを見て「それならそっちにしたわ…」みたいな気持ちはあります…。まあ、こんなことでもないとRadeonを買うこともなかったと思いますし、使ってみたら改めて知ることも多く、AI以外の用途なら悪くないというのがわかったので良しとします。
7900XTXも出始めの頃のドライバの出来は相変わらず散々だったようなので、他人におすすめするときは「Geforce買っておけ」と言いますが…。
FSPカウンタなどで高いフレームレートを見ると気持ちがいいですが、逆に消費電力を減らす方に振ってみるのも面白いと思いました。
以上
余談:過去のATiで踏んだもの
3870を2枚でCrossFireしていたときが一番ひどかったです。CFを使うとどのドライバでも何かしらおかしかったので、その出来の悪いドライバから一番マシなのはどれかを探すのが大変でした。ジャンク漁りかな?
どれも出来が悪いので、毎月出るCatalystドライバに今抱えている問題が直らないかという僅かな願いをかけて更新するのですが、ひどいものだと入れたら最後、青くなって戻ってこれなくなるということが多々ありました。月刊Catalyst!今月号の付属はきれいな青画面つき!!!みたいな感じでした。
まあ、そのあとGTX295を使いましたが 結局nVidiaでもデュアルチップはうまく動かない事が多く、その後使ったHD4890は安定していました。
余談:買ったモニタ
モニタについてはそこまでこだわりがないのですが、1枚だけ変えると色味が合わないとかベゼル位置が合わないというような微妙なストレスが嫌なので、使っていた4枚をすべて交換する前提で安いものを探していました。するとAliで162ドルのものが見つかりました。 (今は絶版になってますが)
モバイルモニタなどの中国製モニタをいくつか試した経験から、今の中国製のモニタのパネルはそれなりに品質が高いという経験則と、ベゼルに変な文字が入っていないのと、何故かこれだけ大きいにも関わらず送料が無料だったので 、試しに1枚買って1ヶ月検証したのですが、そこそこ良かったので計4枚買いました
まあ買った時期によって(もともとできるとは書いていなかった)入力のPiPができるリビジョンとできないリビジョンが混ざっていたとか、 旧リビジョンのモニタについてきたACが公称消費電力が45Wに対して12V/3.33A=40Wという微妙に出力の足りないACで「大丈夫かこれ」とか思っていたら案の定1ヶ月でACが壊れたとか、解像度をWQHDにすると144Hz駆動にする裏オプションが存在するとか、大陸しぐさ満載でしたが、鍛えられてくるとむしろそれが楽しくなってきます。 色んな意味でシビレますね。
ちなみにACについては汎用的な2.2/5.5mm径のACなので在庫が家にくさるほどあり、12V/5Aのものに交換して無事に動きました。それを口実に紛争を開始して部分的な返金を受けられたので良しとします。向こうも知ってか後期リビジョンではACが最初から12V/5Aのものになっていました。色については初期は黄色みが強いですがOSDで調整すればいい感じの発色になりました。
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